この記事を読むと次のことが分かります。
- 換毛期のシーズンと抜け毛の時期がずれる理由
- 抜け毛の掃除とブラッシングを生活に取り込むコツ
- 毛玉を吐く理由と受診を考えるサイン
猫の換毛期はいつ?春と秋に毛が入れ替わる
猫の毛は年に2回、季節の変わり目に入れ替わります。冬毛から夏毛へ、そして夏毛から冬毛へ。この時期を換毛期と呼び、抜け毛が普段より増えます。
時期の目安は、秋が9〜11月ごろ。春は資料によって幅があり、3〜5月とするものもあれば、5〜7月とするものもあります。動物病院が発信している情報どうしでも食い違うため、「何月から何月まで」と線を引くのは難しそうです。期間についても、1か月ほどとするものから6〜8週間とするものまで幅があります。
毛の入れ替わりの引き金になるのは、日照時間と気温の変化です。日が長くなる、あるいは短くなるという光の変化を体が感じ取り、毛の生え替わりが進みます。
冬毛と夏毛では作りも違います。冬毛は長く細い毛になり、熱を逃がしにくくなります。夏毛は逆に、短く太い毛が中心になり、下毛(アンダーコート)の本数も減ります。この変化によって毛のあいだを空気が通りやすくなり、熱が抜けやすくなります。
換毛期は「一気に生え替わる1か月」ではない
換毛期は年2回、およそ1ヶ月ほどというのは説明したとおりですが、猫の抜け毛対策は「春と秋のひと月だけ乗り切れば終わり」というわけにはいきません。猫の毛は、換毛期以外の時期もずっと抜け続けているからです。
実際に猫の毛の入れ替わりを長期間観察した報告によると、全身の毛が一斉に入れ替わるわけではなく、生え替わりはゆるやかに進むようです。季節による周期はあるけれど、ある時期にすべてが入れ替わってまた生えそろう、という進み方ではないということですね。
室内飼いだと換毛期がなくなる?
もうひとつ、よく見かける説明があります。「完全室内飼いの猫は日照や外気温の影響を受けにくいため、換毛期がはっきりせず年中抜け続ける」というものです。
獣医学の教育資料には、動物一般について「屋内でほぼ一定の環境で飼われている動物は、年間を通じて毛が抜けることがある」という記述があります。ただこれは猫に限った話ではありませんし、室内の照明やエアコンが猫の換毛周期をどこまで変えるのかを直接調べた研究は見当たりませんでした。
つまり「室内飼いだから換毛期がない」と言い切れる根拠はなさそうです。時期を予測してその期間だけ集中的に対応するのではなく、通年でケアを続ける前提で見積もっておくのが安全です。
抜け毛の掃除は、毎日の固定タスクになる
猫を迎えると、掃除の手間が一段増えることになります。年2回の抜け毛のシーズンにはそれが濃くなる、というイメージで考えておくとよいでしょう。
抜け毛掃除の基本的な対策
猫の抜け毛は軽くて空気中に舞いやすく、静電気で布に絡みつきます。床に落ちるだけでなく、ソファ、ラグ、カーテン、脱いだ服、そして寝具にも付きます。掃除機をかけた翌日にはまた目につく、という状態が日常になります。
毎日となるとなかなか大変ですが、掃除を手早く済ませるコツは、場所に応じて道具を使い分けるこです。
●床・フローリング:掃除機をかけましょう
●布製品:粘着クリーナーやゴム手袋が向いています(ゴム手袋で撫でると、静電気で絡んだ毛がまとまって取れます)
●衣類:洗濯機に入れる前に毛を落としておくと、洗濯槽やほかの衣類に移りにくくなります
また、見落としやすいのがフィルターの目詰まりです。掃除機やエアコンのフィルターは、猫がいる家庭では詰まる速度が上がります。手入れの頻度も上げる必要が出てきます。
抜け毛対策はコスト面でも考えておく
お金の面も見ておきましょう。ブラシ本体は数百円から数千円程度ですが、粘着クリーナーの替えテープは消耗品として継続的にかかります。掃除の負担を減らすためにロボット掃除機を検討する人もいますし、洗濯の回数が増えれば水道光熱費にも跳ね返ります。
ひとつひとつは小さな額でも、毎月続く費用として頭に入れておくと、迎えたあとの誤算が減ります。猫を迎える費用の全体像は、別記事『猫を飼う費用の完全シミュレーション』にまとめています。
といっても、毎日完璧に取り切る必要はありません。粘着クリーナーを手の届くところに置いておき、気づいたときに数分かける。その程度の習慣で暮らしは回ります。
猫種によっても抜け毛の多さは違う
毛の量は猫種によっても差があります。短毛でも、上毛と下毛の二層構造になったダブルコートの猫種は抜け毛が多めです。猫種を検討している段階の方は、別記事『初心者におすすめの猫種10選』もあわせてご覧ください。
なお、「抜け毛が少ない猫種を選べばアレルギーが出にくい」とは限りません。アレルギーの主な原因は毛そのものではなく、唾液や皮脂に含まれる成分だからです。この点は別記事『猫アレルギーかも?迎える前に確認すべきこと』で詳しく整理しています。
ブラッシングの頻度と、最初に選ぶブラシ
抜け毛対策の中心はブラッシングです。抜けかけた毛を先に取っておけば、部屋に落ちる量も、猫が毛づくろいで飲み込む量も減らせます。
頻度の目安は、短毛種で週2〜3回、長毛種は毎日。換毛期はこれより回数を増やすとよいとされています。海外の資料では短毛種を週1回程度とするものもあり、ここにも幅があります。毛の抜け方を見ながら調整するくらいの受け止めで十分です。
長毛種で毎日が推奨されるのは、抜けた毛が体に残るともつれの原因になるためです。とくにダブルコートの猫種は下毛が密なので、表面だけ撫でても抜け毛が取りきれません。
●ブラシの種類と特徴
- ラバーブラシ:ゴム製。短毛種の抜け毛取りに向く。皮膚に当たっても比較的やさしい
- コーム(くし):毛のもつれを見つける・仕上げに使う
- スリッカーブラシ:くの字に曲がった細い針金が並んだもの。長毛種のもつれ対策に有効
最初の1本を選ぶなら、ラバーブラシがオススメです。スリッカーブラシは長毛種のケアに有効ですが、針金が細いぶん力加減が難しく、慣れないうちは皮膚を傷つけてしまうことがあります。
長毛の猫を迎えるなら、まずラバーブラシで触られること自体に慣らし、扱いに慣れてからスリッカーやコームを足していく順序が安心です。子猫のうちは、毛を取ることよりも触られることに慣らすほうが先だと考えてください。
必要な道具の全体像は別記事『子猫を迎える前に揃える必需品リスト』にまとめています。
もつれができやすいのは、耳の後ろ、脇の下、尾の付け根、内股のあたりです。動きの多い部分や、猫が自分で毛づくろいしにくい部分と重なります。ブラッシングのついでにこのあたりを指で触り、ごわつきがないか確かめておくと、もつれが小さいうちに気づけます。
嫌がるときは無理にブラッシングをしないようにします。数分で切り上げて構いませんし、機嫌のよいタイミングを選べば十分です。無理に押さえつけてブラシを嫌いになられるほうが、長い目で見ると損をします。
毛玉を吐くのは普通?受診を考えるライン
猫は毛づくろいのときに自分の毛を飲み込みます。飲み込んだ毛の多くは便と一緒に出ていきますが、胃に残ったぶんは吐き出されます。これが「毛玉を吐く」と呼ばれる現象です。吐き出されたものは球状ではなく、食道を通るときの形で細長くなっていることが多いとされています。
ときどき吐くこと自体は、猫にとって珍しいことではありません。
ただ、「毛玉だから大丈夫」で片付けてしまうと、別の問題を見落とすことがあります。吐く頻度が増えてきた、食欲が落ちている、元気がない。こうしたときは毛玉以外の原因も考えられますので、動物病院で相談してください。
とくに、何度もえずいているのに何も出てこない、ぐったりして動かないという状態は、様子を見ずに受診してください。飲み込んだ毛や異物が腸に詰まっているおそれがあります。詰まってしまうケース自体はまれですが、その場合は外科手術が必要になることもあり、時間が経つほど状態は悪くなります。
嘔吐の頻度をどこで区切って受診を判断するかは、別記事『猫がかかりやすい病気10選』で「今すぐ受診」「翌日以内に受診」「数日は経過観察」の3段階にまとめています。判断に迷ったときはそちらを目安にしてください。
季節の換毛か、気になる脱毛か
抜け毛が増えたとき、季節によるものなのか、そうでないのかを見分ける手がかりがあります。
●季節の換毛と、気になる脱毛の違い
| 見るところ | 季節の換毛 | 気になる脱毛 |
|---|---|---|
| 抜け方 | 体の広い範囲から、左右同じように | 一部分だけ、円形に、急に |
| 皮膚の状態 | 見た目の変化はない | 赤み・フケ・ブツブツ・かさぶた |
| 猫の様子 | いつもどおり | 同じ場所を執拗に舐める・掻く・毛を噛みちぎる |
右側に当てはまるものがあれば、季節の換毛とは別の原因が隠れている可能性があります。皮膚や内臓の病気が背景にあることもありますので、様子見を続けず動物病院で相談してください。考えられる病気については別記事『猫がかかりやすい病気10選』で解説しています。
シニア期に入ってから毛のもつれやフケが急に増えた場合は、口の痛みや関節の不調でうまく毛づくろいができなくなっているサインのこともあります。別記事『猫の健康診断完全ガイド』も参考にしてください。
よくある質問
自分でハサミを入れるのは避けてください。猫の皮膚は薄くよく伸びるため、もつれを引っ張ると皮膚も一緒に持ち上がり、毛と一緒に皮膚を切ってしまう事故が起きています。動物病院やトリマーでは、コームを毛玉と皮膚のあいだに差し込み、皮膚を守りながらハサミやバリカンを入れていきます。大きなもつれができてしまったときは、無理に取ろうとせず相談するのが安全です。
どちらも補助的なものと考えてください。猫草については、草を食べる猫を対象にした2回の飼い主アンケート調査があります。食べる前に体調が悪そうだった猫はごくわずかで、短毛の猫も長毛の猫と同じくらいの頻度で草を食べていました。「毛玉を出すために食べている」という説明とは合わない結果です。なお、食べたあとに頻繁に吐いた猫は、2回の調査でおよそ3〜4割と幅がありました。用意しなければならないものではありませんので、猫が好むようなら楽しみのひとつとして置いておく、くらいの位置づけで十分です。
毛玉ケアフードは食物繊維などで毛の排出を助ける設計のものですが、主食を選ぶ基準は別にあります。別記事『キャットフードの選び方』もあわせてご覧ください。
必須ではありません。室内で暮らす短毛の猫は、ブラッシングが足りていれば一般にシャンプーの必要はないとされています。一方、長毛種は抜けた毛が残るともつれやすくなるため、定期的にシャンプーを取り入れる方法もあります。ただ水を苦手とする猫は多いので、無理に習慣化しようとせず、必要に応じて動物病院やトリミングサロンに相談する選択肢も持っておくとよいでしょう。
触られても平気な場所から始めます。背中や首の後ろなど、猫が受け入れやすい部分を短時間だけ。嫌がるそぶりが出る前にやめるのがコツで、これを繰り返すと「ブラシ=嫌なこと」になりにくくなります。道具を替えると受け入れることもありますので、手にはめて使うグローブタイプを試す方法もあります。
まとめ・次のアクション
猫の換毛期は春と秋の年2回。ただ、資料によって時期には幅があり、毛は1年を通じて抜け続けています。「この時期だけ頑張る」ではなく、通年の習慣として猫とのコミュニケーションの一環にするのが現実的です。
最後に、この記事の要点を整理します。
- 換毛期は春と秋。ただし時期の区切りには資料ごとに幅があり、毛は換毛期以外も抜けている
- 抜け毛の掃除は毎日の固定タスクになる。道具代・洗濯・フィルター掃除まで含めて見積もる
- ブラッシングは短毛週2〜3回・長毛毎日が目安。最初の1本はラバーブラシが扱いやすい
- 毛玉をときどき吐くのは珍しくないが、頻度が増えた・えずくのに出ない・食欲が落ちたときは受診を
次の一歩
- 『子猫を迎える前に揃える必需品リスト』 ➡ ブラシを含めて何を揃えるかの全体像
- 『猫を飼う費用の完全シミュレーション』 ➡ 掃除・消耗品も含めた生涯費用
より深く知りたい方へ
- 『猫がかかりやすい病気10選』 ➡ 受診の目安と皮膚のトラブル
- 『猫の健康診断完全ガイド』 ➡ シニア期の変化に気づくための定期健診
関連トピック
- 『初心者におすすめの猫種10選』 ➡ 猫種による毛の量とお手入れの差
- 『猫のための夏の暑さ対策』 ➡ 暑い季節の環境づくり
参考にした情報源
- Merck Veterinary Manual(猫の皮膚と被毛の構造について)
- Cornell Feline Health Center(毛球について)
- Texas A&M University College of Veterinary Medicine(猫のシャンプーの必要性について)
- ASPCA(ブラッシングについて)
- 動物病院各院の公開情報(ブラッシングの頻度・もつれの処置について)
